「VA-11 HALL-A(ヴァルハラ)」~ゲーム作品紹介

基本情報

VA-11 HALL-A(ヴァルハラ)

 

機種:プレイステーションヴィータ(PS Vitaカード)
発売:PLAYISM(日本版)
開発:Sukeban Games
CERO:D(17歳以上推奨)
プレイ人数:1
発売日:2017年11月16日
価格:パッケージ版:3,240円(税込)

ダウンロード版:2,000円(税込)
トロフィー対応:〇

VitaTVでのプレイ:対応
ゲームジャンル:サイバーパンクバーテンダーアクション

 

 

ベネズエラのパブリッシャーが贈る新機軸のテキストアドベンチャー

 

本作は南米ベネズエラのパブリッシャー「Sukeban Games」開発のアドベンチャーゲームで、開発側が提唱するジャンル名は「サイバーパンクバーテンダーアクション」とその一点をもってしてもオンリーワンな響きを放つ作品だ。

元々はsteamで展開していたPC向けタイトルだが、PLAYISMによるローカライズでPS Vita版が登場。初のコンシューマー移植と相成った。コンシューマー展開は現状PS Vitaだけではあるが、パブリッシャーのブログを見ている限りではNintendo Switch版へのリリースにも意欲的なことが伺え、今後他ハードでの展開も十分に考えられる。

プレイヤーは近未来都市を舞台にしたグリッチシティのバー「VA-11 HALL-A」(ヴァルハラ)の女性バーテンダー・ジルとなって、来店客との会話を挟みながらオーダーに倣ってカクテルを提供する。といった内容で、バーテンダーアクションというキーワードはこの"カクテルを提供する"といった部分に絡んでくることになる。オーダー通りのものを作り上げて提供するも良し、オーダーと全く違った味わいのカクテルを提供することもできる。その辺りの選択はプレイヤーの自由だ。


 一日を変え、一生を変えるカクテルを

 

「VA-11 HALL-A」のゲームの流れを簡単に説明するとゲーム内の12月12日~31日の3週間に渡って来客のオーダーに対してプレイヤーの判断で思い思いのカクテルを提供していくというもの。プレイ中は終始ジルの視点でゲームは進行するが、従業員や来店客との日常的な会話に沿ってストーリーが展開していく。

日々の来店客との会話を挟みながらオーダーに倣ってカクテルを提供する― といった流れを日々繰り返していくことになるが、本作で提唱されているジャンル名「バーテンダーアクション」はこのカクテルを作る部分に絡んでくることになる。

カクテルを作るという、ビデオゲームでもあまり見慣れない題材を絡めてきてはいるが本作のカクテル作りの仕組みはシンプル。アルデヒド、カルモトリンなどあらかじめ用意されている5種類の材料を使ってレシピを参考にそれぞれ決まった比率どおりに混ぜ合わせるだけ。一般サイズを作りたい場合はレシピ通りの比率で混ぜ合わせ、大サイズを作りたい場合は2倍量で混ぜ合わせて作成、といった具合だ。

 

客の好みを把握するのも一流バーテンダーの務め?

 

本作ではマルチエンディング形式がとられているが、その分岐条件として「客のオーダーにどう応えるか」というのが重要なポイントとなってくる。例えばある客から「ノンアルコールのお酒が飲みたい」といったオーダーが来た場合はカルモトリンを抑えたカクテルを提供する、といった具合に客のその時の気分に合わせた配慮が後のストーリーに異なる展開を及ぼす場合もあるのだ。お店に通い慣れてきた客に至っては時々オーダーが「いつもの」とか「何か甘いもの」と漠然としたものになることがあり、具体的に何のカクテルが欲しいかとは言ってくれない機会も増えてくる。こういった場合はレシピをよく見てカクテルの味の傾向を掴んだ上で、その客がどういう傾向の味を好むか、あるいは何のカクテルが好きなのかを把握しておく必要が出てくる。

 

グリッチシティで日々を送るクセの強い登場人物達

 

「VA-11 HALL-A」の登場人物は非常に個性的で来店客の一部を取り上げてみても、幽霊と思しき少女、喋る犬、人間そっくりなドロイド(作中では「リリム」と呼ばれる)、世界五大瓶詰め脳の一人、など凡そ種族の壁を取っ払っての強烈な個性をもったキャラクターが並んでいる。人間に至っても五体健全な人物はほぼ存在せず、事故や大病によって喪った機能の代替などを理由に身体のどこかにナノマシン手術を施しているキャラも多い。露骨な下ネタが時々見られる作中では飲酒描写を通してその上で性的な話題が飛び出すこともあり、特定のキャラクター間ではジェンダーレスな愛情描写も見られたりと、各々複雑な事情を持つ登場人物達を通すことで、207X年のディストピアという舞台背景がほんの僅かながら伺える。より深く世界観を楽しむ上では後述のマイルームパートでの端末による記事各種がその一助となるだろう。一枚絵とテキストで語るゲーム内容なため露骨な描写はほぼ全くと言っていいほどないが、その分想像で膨らませていくタイプの作品だと言える。

また、他パブリッシャー作品とのクロスオーバー要素としてアドベンチャーゲーム作品「2064:Read only Memories」から一部の登場人物がゲストキャラとして参加。特定の条件を満たす事で来店客として登場する。「2064:Read only Memories」はほぼ同時期にPS4版がダウンロード専用タイトルとして配信開始されており、Vita版への移植も決まっておりこちらは後日配信予定とのことだ。

  

勤務を終えて自分の部屋で過ごす一時

 

その日の勤務を終えるとスコア決算画面になり、働きに応じた金額がそのまま懐へと入ってくる。決算画面の後はジルは自分の部屋に帰宅、同時にマイルームパートへと移る。

ワンルームにこたつに猫といった何故か日本文化溢れる雰囲気に満ちた空間にくつろぎを覚えるが、このパートではタブレット型と思しき端末で某匿名掲示板風のスレッドを覗いたり、ニュースサイト「オーグメントアイ」の記事などを中心にほぼ日替わりでゲーム内の情勢を知ることができる。記事1つ1つに対してジルと愛猫のフォア(なぜかジルとは会話が成立しているという設定)同士の掛け合いが観られるのも見所だ。これらは見ても見なくてもゲーム展開には一切影響は及ぼさない要素だが各登場人物が絡む内容も多いため、目を通すことでいっそうゲーム内への関心が深まること請け合いだ。

本編がある程度進むと端末の項目にナノカモというものが追加される。どちらも室内の内装デザインを変えられるもので、ナノカモはこたつの布団や内壁の模様を変えられるといったもの。種類こそ多くはないが気分に応じて変えるのも楽しみ方の一つだ。

  

90年代PCアドベンチャーゲームを意識したビジュアル


256色調でまとめ上げられた本作のビジュアルは往年のPCアドベンチャーゲームを意識したグラフィックで、一見で懐かしさを感じる方も多いだろう。207X年という時代設定やサイバーパンクを強調した世界感も同ジャンルが特に人気を博していた80年代中期~後期当時のアニメ作品「バブルガム・クライシス」、「AKIRA」などの世界観を髣髴とさせ、実際元ネタからの派生だと思われるパロディも劇中でちらほら見られる。

サイバーパンク作品からに限らず本作ではジャパニメーションや日本産ゲーム作品含め新旧問わず風俗、オタク文化にまつわるパロディが随所で多々見られ、バーが舞台であるだけに作中も当然アルコール描写が絡み、そこに彩りを加えるかの如く会話の中でも下ネタがここぞとばかりに飛び出したりと、成人向け且つ強烈な味わいを見せる作風に仕上がっているが、ビジュアル面での性的な要素は実質皆無なのでその点に期待する場合はやや物足りなく感じるかもしれない。

  

Garoad musicが手掛けるイキなサウンドを店内BGMに

 

本作のもう一つの魅力はGaroad musicが手掛けるオシャレなサウンドにある。ゲーム内のバーテンダーパートではジルの出勤直後と休憩上がり直後のタイミングで毎回ジュークボックスの選曲画面に入るのだが、ここでは収集済みのサウンドの中から12曲を自由に入れ替えることができる。選択が終わると入れ替えた曲順で直後のバーテンダーパートを楽しむことが出来る仕組みだ。

PS Vita版ではアレンジを含め60曲以上ものBGMが用意されており、最初から選択可能なもの以外はゲーム内で特定の条件を満たす事でそれぞれ収集可能となる。本作楽曲についてはPS Vita版店舗予約特典として16曲入りのサウンドトラックCDが付いてきたが、本作は元々全世界向けにダウンロード版のフルアルバムが配信されており、そちらでは一部アレンジ曲を除けば作中のBGMが余すところなく収録されている。何れの曲も注目ではあるが個人的イチオシは作中でアレンジも収録されている「Every Day is Night」で、普通にプレイしているだけでも自然と耳にする機会が多く「代表曲」という印象が強い一曲だ。

  

飲み物とつまみを傍らに肩の力を抜いて楽しむアドベンチャー

 

VA-11 HALL-Aを舞台に繰り広げられる人間ドラマと独特の世界観が醸し出す本作の雰囲気を肴に飲み物を味わうのも一興だ。ローカライズによる洋画吹き替えとも国産アニメとも一味違った独特のテキストによる会話劇はややクセがあり好みは別れるところだが、個性的なキャラとの相乗によって味わい深いものになっておりキャラ達の魅力を引き立てる効果も十分。

本作をニューゲームで開始した際「飲み物とおつまみを用意して、リラックスした状態でプレイしてください」という一文が添えられるが、実際肩の力を抜いて楽しむスタンスの作品である点については終始ブレはなく、あくまでもバーテンダーと来店客の間で展開される会話劇によるドラマが本作の主軸であり、ディストピアを題材にした際に期待され易いアクション的な展開は本作では一切見られないのでそうした方向での盛り上がりには欠けるが、上記の点を踏まえた上で往年のPCテキストアドベンチャーの雰囲気を味わいたいアドベンチャーゲームファンは元より、特定キャラ同士の百合的なシチュエーションを好む、いわゆるキャラゲー好きな方にも一見の価値ありな作品だ。価格もお手頃なので気になった方は是非。