「ショベルナイト」 ~ゲーム作品紹介

基本情報

ショベルナイト

機種:ニンテンドー3DS(フラッシュメモリカード)
発売:任天堂(日本版)
開発:Yacht Club Games
CERO:A(全年齢推奨)
プレイ人数:1
発売日:2016年11月17日
価格:ダウンロード版:2,160円(税込)

パッケージ版(amiibo同梱):3,780円(税込)
すれ違い通信対応:〇
ゲームジャンル:2Dアクション

外製ながら異例の好待遇? パッケージ版はamiibo付属の豪華仕様

2008年にWiiWare(Wii専用ダウンロードゲーム)で配信された「ロックマン9 野望の復活!」を皮切りに、2010年代はsteamや各コンソールのダウンロード専用タイトルとして8bit、16bitリスペクトなデザインのゲームが少しずつ台頭してきている感があり、パッケージ、ダウンロード両方を眺めていくことで近代的デザインのゲームと昔ながらのレトロデザインなゲームが交錯する面白い時代となっている。

とはいえレトロデザインなゲームのほとんどはブランド面でどうしても弱いのかその大半はインディーズゲームとして一括りにされがちではあるが、今回紹介する「ショベルナイト」は3DS版においては任天堂が販売を受け持ったという貴重なタイトル。驚くことにパッケージ版は主人公キャラであるショベルナイトのamiibo付という、外製単発タイトルしては異例の好待遇っぷりだ。

本作の開発は北米のデペロッパーYacht Club Gamesで後にPS4、Vitaでもダウンロード専用タイトルとしてリリースされ、こちらについてはYacht Club Gamesが販売を手掛けている。

 

徹底された8bitデザインの「ファミコン風」新作アクションゲーム

「ショベルナイト」の魅力はなんといっても、徹底された「ファミコンゲーム風」デザインにある。ファミコンのタイトルを少しでも体感した方ならば、本作を起動した途端画面いっぱいに広がるキャラ、背景、文字一つ一つのデザインや色味からサウンドに至るまで一度感じただけで伝わるはず。操作感やドットグラフィックのディテール面では当時に比べればやや洗練されすぎてる感はあるものの、正直ファミコンの新作かと言われても全く遜色がない。それくらいに「ファミコンのゲーム」然としている。
ボタン操作もオプションから自由にキー設定が可能で、特にサブウェポン操作を「↑+攻撃」に合わせることでより強くレトロスタイル感が増すこと請け合いだ。

一方で海外開発タイトルということもあり本作では各国向けに言語切り替えが可能だが、用意されているだけでも8種類もの言語がサポートされている。純粋な2Dアクションゲームながら本作では時々会話パートが挿入されるので、二周目以降のプレイでは好みで言語を他国のものに切り替えて新しい気分で遊んでみるというのも一興だ。

戦闘 採掘 ギミック突破― 基本アクションはショベル1本で

表題が「ショベルナイト」ということもあり、主人公キャラであるショベルナイトが携えるのはその名の通り一本のショベル。ナイト…騎士といえばほとんどの場合使う武器としてイメージされるのは剣や槍だったりするが、ショベルナイトは敵との戦闘から宝の発掘、更には高所へと移るために敵やギミックを脚掛けとしての多段ジャンプ用に…とステージを突破する上での様々なアクションをショベル中心に行っていく。

ショベルでの攻撃は立ち状態、しゃがみ状態、ジャンプ中にそれぞれ繰り出す基本攻撃とジャンプ中↓キーを入れることで繰り出す下突きの4種類が基本になるが、特に立ち状態の攻撃は体感リーチが短めで判定もそう広くはないため敵との距離感を掴むのがやや大変。ショベル以外の攻撃手段としては後述するレリックによる特殊攻撃があるが、エネルギー消費性の上にステージ攻略中は道中回収できるエネルギー回復アイテムの数も限られるので多用は禁物で、やはり敵を倒していく上での基本的な攻撃手段はショベルによる攻撃に依るところが大きくなってくる。ショベルによる各アクションはクセの強い部分も多いが、道中は長いので早いうちに手に馴染むよう慣れておきたいところだ。

多彩なサブウェポン 各種レリックがステージ攻略を大きくサポート

ショベル一本で長い道中を進んでいくのは中々心もとないが、ステージ道中で宝石各種を獲得してお金を貯めることで街にいる各NPCを通じてレリックを購入することができる。本作でのレリックはいわゆるサブウェポンに辺り、ショベルナイトが使用するレリックは10種類以上に及ぶ。いずれもエネルギーを消費することで使用でき、ボタンによって瞬時の切り替えが可能。効果の種類は攻撃に特化したものからギミック攻略に適した効果のものまでさまざまで、中にはステージ中で釣りを行うような釣り竿といった一風変わったものまである。難所を突破する上でレリックの使用が前提になっている設計のステージもあり、場面によっては必須となるものも中にはあるので新たなレリックを手に入れたらとりあえず効果を試した上で状況に応じて使い分けていこう。

地獄の沙汰も金次第? 所持金回収による半フリープレイシステム

本作の難度バランスはファミコン時代のアクションゲームでもよく見られたいわゆるトライ&エラー前提で作られている様相で、ワンミスの際の死亡要因はボス戦や道中のギミック及び落下死によるものがその大半を占めると思われるが、基本的に残機という概念は本作にはなくミスした際は道中でマークした各所チェックポイントからの再スタートとなる。ただしリスタートの際はミスした地点に所持金の何割かがばら撒かれ、その地点まで戻って回収することで元の所有額に戻す事ができるといった仕組みだ。

回収前に別の場所で死んでしまった場合は、直前にばら撒いた分のお金は消滅してしまうため、回収できずに連続死が続くと少しずつ所持金が減っていくことになる。ただし本作では買い物各種において過度な金銭は要求されず、喪失分の金額を復旧させるのもそれほど難しくはないのであまり深刻視する必要もないだろう。一回一回の攻略に適度な緊張感を与えるエッセンス程度に考えて差し支えない。

立ち塞がる敵 エンチャントレスと8人の騎士

アクションゲームとしての特徴ばかりを取り上げてきたが、一方で本作はストーリー面もしっかりと描かれている。ショベルナイトのかつての冒険において共に戦っていた相棒シールドナイトの行方の捜索、及び運命の塔の封印が解けた影響で出現した強大な魔力を持つエンチャントレスと彼女に従う8人の騎士達の打倒が本作の大きな目的となる。8人の騎士達はショベルナイトとの因縁も深く、各ボスとの対決前には毎回会話シーンが展開。台詞総量こそそう多くはないが、各キャラの個性が垣間見える本作の見所の一つといえるだろう。

アップデートで更にゲームモードが拡張

本作はアップデートにより新たなコンテンツが追加される仕様だが、主人公が異なるゲームモードが2つ存在する。ショベルナイトでストーリーモードをクリアすることで、新たなゲームモードとしてプレイグナイトが主人公の「プレイグオブシャドウズ」が追加。ゲームデータをver3.0にアップデートすることでスペクターナイトが主人公の「スペクターオブトーメント」でそれぞれプレイ可能となる。

2つのゲームモードの主人公はどちらもショベルナイトにとっては敵側の8人の騎士の一人にあたるキャラで、どちらのモードでもショベルナイトとは異なる視点、異なる展開、異なるアクションでの全く新しいアクションゲームを楽しめる。ゲームスタート直後の冒頭デモまで本編と同様のクオリティで単なるおまけという扱いではなく、新たなゲームモードという扱いだ。ショベルナイトで本編が終わったというプレイヤーも新たな気持ちで是非挑戦してみよう。

往年のアクションゲームの特徴を捉え、丁寧にまとめ上げた快作

ステージのルート選択システムや8人の敵とその奥で待ち受ける1人の強大な敵、特殊武器の切り替えによる各所突破など、ファミコンの横スクロールアクションゲームを代表するタイトル「ロックマン」シリーズなどを遊んだことがあるプレイヤーには共通したエッセンスも多くより親しみやすい作風でもあるだろう。基本攻撃に関しては画面端まで飛んでいくロックマンのそれのような万能感こそないが、キーレスポンスを始めとした操作の快適度合いは決して引けを取らない。

何より30年経った今でも8bitライクデザインのゲームというのは廃れることはなく、インディーズを中心で見ればむしろ現在進行形で色んなデベロッパーによって新作が作り続けられている傾向にある。その中で中途にレトロ要素を絡めたデザインではなく「徹底してファミコンらしい近代アクションゲーム」を求めている人にとっては「ショベルナイト」は注目せずにはいられない一本となるのは間違いない。今回の記事では3DS版の紹介となったが、ダウンロード用タイトルとしてならばPS4、Vita版も出ているので所有プラットフォームに併せて選べるのは嬉しい点と言える。

ファミコンらしさを全面に押し出したノスタルジック溢れる作品ではあるが、中身は硬派なアクションゲームそのもの。オプションや拡張要素の充実ぶりといった近代的な作りも含めて、全ての2Dアクションゲームファンに向けてオススメできる一作だ。全バージョン共に価格も良心的なので気になった方は是非。