198X ~ビデオゲームを通して綴られる80’s青春グラフィティ

 

タイトル 198X
対応機種 Steam/Nintendo Switch/PlayStation4
販売/開発 ハチノヨン(※日本向けコンソール版)/Hi-Bit Studios
発売日 2019年6月21日(Steam版)/2020年1月23日(Nintendo Switch版)/2020年12月20日(PS4版)
対応言語 英語、日本語

 

©有限会社ハチノヨン/Published by Hi-Bit Studios

 

 

 

ほろ苦い記憶の残る80年代に想いを馳せて― 5つのビデオゲームが一人の青年の回想録を彩る

「198X」はスウェーデン、ストックホルムのパブリッシャーHi-Bit Studiosが開発を手掛けるゲーム作品。日本版コンソール機向けの販売は有限会社ハチノヨンが担当。カプコン社のシューティング作品「19XX」に近いフレーズを持つタイトルだが、内容については一切関連性はない。

1980年代を示すタイトル通り、その時代設定はコンピューターゲームの進化が著しい80年代真っ只中で、本作は架空の街サバービアを舞台に当時、多感な十代をゲームという文化に触れて過ごしてきた人物キッドの葛藤をピクセルアートによるアニメーションビジュアルを通じ、独白形式で淡々と綴ってゆく青春グラフィティだ。

公式で呼ばれている本作のゲームジャンルは「アーケード」となっているが、そのジャンル名に違うことなく作中での重大なファクターとなっているのがアーケードゲーム。作中に登場するのはいずれもフィクションのゲームだがプレイヤーの手できっちりと遊ぶことができる仕様で、短編ノベルの合間に各ゲームをプレイする、といったやや特異な構造が本作の特徴となっている。

 

 

キッドの心に刻まれる5編のゲーム作品

 

前述での紹介どおり作中では読み進める毎に5編のゲーム作品が順次登場し、プレイヤーはキッドのストーリーを読み進めていた視点から一転、ゲームをプレイする側へとナチュラルに切り替わる。

登場する5タイトルはいずれも全編のさわりの部分をプレイヤーが実際に操作できる作りになっており、体感プレイ時間はスムーズに進めて5~10分ほど。特定のポイントまで進めることでゲームのシーンがフェードアウトしてゆき、物語本編の続きへと進むことができる仕組みだ。万一ゲームオーバーとなった場合でも、コンティニューし放題となっているため詰まる心配はないので安心して挑戦しよう。

 

BEATING HEART

ゲーム開始早々にプレイすることになる「BEATING HEART」は「ファイナルファイト」、「ベアナックル」タイプのスタンダードなベルト格闘アクション。パンチ&キックは勿論のこと、掴み技や金属バットによる武器攻撃、アイテムを拾って体力回復といったこの手のゲームではお馴染みのシステムはしっかり網羅されている。

 

OUT OF THE VOID

「OUT OF THE VOID」はサイドスクロール型式のシューティングゲーム。自機が兵器として利用する壁反射型のレーザーやビット、更には多関節で動く敵キャラクターなど「R-TYPE」へのリスペクトに溢れる内容となっている。1ステージ終了制ながらステージは比較的長めで、敵機のバラエティも中々に豊かだ。

 

THE RUNAWAY

「THE RUNAWAY」は「アウトラン」風の3Dカーアクションゲーム。制限時間内を赤いスポーツカーで駆け抜けていく。夕焼けの荒野を行く前半と夜間の街を行く後半の2部構成で前半はカーブが多め、後半は四車線化で道幅が広くなる一方で交通量が多い、とメリハリの利いたステージ構成。ゴール直前のゲートブリッジ付近まで辿り着くことで、クロスフェード気味に独白とシンクロしていく作中演出が心地よい。

 

SHADOW PLAY

「SHADOW PLAY」は強制スクロール形式のノンストップ忍者アクション。続々登場する妖怪を忍者刀による斬撃で撃退しつつ、ジャンプと降りるアクションを駆使して上中下と最大3ラインに分かれる足場を切り替えながらステージを駆け抜けていく。

スクロールスピードがかなり速く、ほぼステージ記憶頼りな覚えゲー要素の強いバランスで初見クリアは若干困難。ここまでに登場してきた4ゲームの中ではステージボリュームもあり、体感プレイ時間は若干長め。最適なルートを探りながら繰り返し挑戦してみよう。

なお、5作中このゲームについてはBGM担当に古代祐三氏を迎えているのが注目点の1つともなっている。

 

KILL SCREEN

数々のゲームを経て、最後にプレイすることになるのがこの「KILL SCREEN」。このタイトルに限ってここまで触れてきたアーケード風ゲームとは異なり、旧時代PCゲーム風の3Dダンジョン形式RPGになっている。

迷宮のどこかにいる3体のドラゴンと、最後に現われる最終ボスを倒すのが目的となるが一般モンスターのエンカウントが多く、1回1回のコマンド入力では敵の弱点をついた選び方をしていかないと、体力負けであっさりやられてしまう。とはいえスタート地点に戻される以外には特にペナルティはないので、ひたすら繰り返していれば倒せるレベルになっているだろう。

 

そして、作中体感することができる最後のゲームとなるこの「KILL SCREEN」のプレイを通して、本作の物語はピークを迎えてゆく。

 

 

“短編+ミニゲーム集”としてとらえるか? それとも”操作するアート”としてとらえるか?

「198X」はビジュアル、ストーリー、ミニゲームの三位一体から成る”操作するアート”といった印象で、これはコンピューターゲームという媒体ならではの表現方式であると唸らされる。全編に漂うアンニュイな雰囲気や物語を彩る高品質なピクセルアートは特に注目点で、デザインにおけるアプローチは現代的でありながらノスタルジックなテイストを確かに感じさせるものとなっている。

 

一方で、本作プレイ後の感想としては冒頭で紹介した通り”短編+ミニゲーム集”という内容の枠を出ることはなく、単純なボリューム面では真っ当にプレイすると1~2時間程度で終わる本編に対し、980円という価格とのバランスに少々の物足りさを覚えてしまう。5編のゲーム自体はいずれも丁寧に作られてはいるが本編の演出装置としての意味合いが強く、最低限の範囲内でしかプレイできない(=内容がミニゲーム相応である域を出ない)のは非常に惜しまれる点だ。

 

独白のみで綴られる物語とミニゲームが交互に登場することによる緩急はあるものの、ストーリーは基本静かなトーンで終始展開していく。作中のキッドと同じ年代をコンピューターゲームというサブカルチャーと共に過ごしてきた世代、あるいは公式サイト及び商品ページから確認できるピクセルアートや各収録ゲームに興味がある、というような諸氏であれば本作は一定の評価を得られる作品となり得るポテンシャルを持つ。作中の時代設定は実際の80年代とは少々剝離した印象も受けるが、そこはフィクションとして割り切れば程良い味わいとなって楽しむ事ができるだろう。

 

 

評価

 

個人的スコア 6.5(10点満点中)

 

良い点

  • 全面ピクセルアートによって大胆に描かれるビジュアルカット。少なからずアニメーションも取り入れられており、芸術性も高い
  • 物語中に登場するタイプの異なる5種類のゲームは小ボリュームながらいずれもしっかり作り込まれている
  • 一度本編で登場したゲームは、タイトル画面から自由に選んで単体でのプレイが可能

惜しい点

  • ストーリー部分自体は比較的短いため、その面に期待して臨んだ場合は肩透かしを食らう可能性も
  • 5種類の各種ゲームをタイトル画面から選んで単体でプレイする際、開始前の演出がスキップできない
  • ゲーム全体で見た場合繰り返し遊びたくなるようなリピート感に欠ける。総じて買い切り型タイプなゲーム内容

 

 

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