商品情報 ジーザス 恐怖のバイオモンスター
対応機種 ファミリーコンピュータ
販売 キングレコード
開発 エニックス
発売日 1989年
©1989 ENIX
©1989 KING RECORD
PC版からの移植作品となるスペースアドベンチャー、OVA作品を意識したビジュアルが魅力
「ジーザス 恐怖のバイオモンスター」はキングレコード販売のファミリーコンピュータ用のアドベンチャーゲーム。
キングレコードといえば、音楽から映画、アニメ映像作品などを手掛けるレコード会社ブランドであるが、当時併せて行っていたファミリーコンピュータ用ソフト販売事業としては「ミラクルロピット 2100年の大冒険」(1987年)に続く2作目。
開発を手掛けるのはENIX(現スクウェア・エニックス)で、本作は1987年に発売された同名タイトルのPC版がオリジナルとなる。また、同社開発の「ドラゴンクエスト」シリーズで劇伴を担当していることでお馴染み、すぎやまこういち氏が本作でもBGMを手掛けていることも注目点の1つだ。
ゲーム形式は「ポートピア連続殺人事件」(1985年 エニックス) 、「北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ」(1988年 アスキー)等に代表される、ビジュアル&コマンド選択型のアドベンチャーゲーム。
この手のゲームにありがちな“気になった箇所にカーソルを移動させて調べる”といったシステムはなく、画面右のコマンド項目から場面ごとに決められたコマンドを選ぶだけで進行可能な形式でストレスなく進めることができる。
調査船のクルーとして登場する多彩な人物達
「ジーザス 恐怖のバイオモンスター」では個性豊かな人物達が登場。
物語の中心となるのはいずれも調査1号機、2号機のクルー達だ。
宗像 速雄(むそう はやお)
本編主人公。ハレー彗星調査2号機乗組員で
銀河戦士養成学校の生徒でシューティングゲームが得意。
FOJY/フォジー
エリーヌが連れているマスコットロボット。
人工知能を搭載しており、会話が可能。
エリーヌ・シュレマン
1号機乗組員 フランス人の天才数学者で、速雄のガールフレンド。
10歳の頃にジュニアピアノコンテストでの優勝経験があり、音楽的な才能も持つ。
ガルシア・バルカス
1号機乗組員 ブラジル人で星の物質を研究。
陽気な性格でハンバーガーが好物。
朱鳳花(しゅ ほうか)
2号機乗組員サブキャプテン 中国人医者。
日本の医科大学に留学した経験から、日本には親近感をもっている。
ロジャー・カーゾン
2号機乗組員。アメリカ人でハーバード大学で宇宙生物学を学んだ後NASAへ就職。
ウィルヘルム・ハイラー
1号機キャプテン。ドイツ人。
フンボルト大学で天体力学を学んだ後、SAL(宇宙航空)のパイロットに。
イワン・ミラコフ
2号機キャプテン。ロシア人*の銀河戦士で冷静で勇猛な性格。
(*販売当時の世界情勢の関係上、ゲーム内での説明では”ソビエト人”)
アンドレイ・ベリーニ
1号機サブキャプテン。イタリア人のコンピューターエンジニア。
当時、天才小学生として一目置かれていたエリーヌを現在のプロジェクトに推薦した。
ナハス・アリ
ジーザス司令官。エジプト出身でハーバード大学を首席で卒業。
平和運動家としても知られる。
2艘の調査船を舞台に発生する不可解な襲撃事件、未知の生物達を相手にクルー達の運命は?
地上2万km上空に建造された「ジーザス」。
地球の最重要拠点であるこの宇宙基地から、ハレー彗星探査船1号機「コメット」、2号機「ころな」が出発。
2艘は順調に航空していたかに見えたが、ハレーのガスを採取した報告を受けた直後、1号機との連絡が途絶える事態が発生。
これに対処すべく、速雄はフォジーと共に1号機内でクルー達の捜索を開始する。
しかし、速雄を待ち受けていたのは未知の生物に襲撃を受けたクルーたちの姿だった…。
操作方法
十字キー:カーソルの移動
SELECT:パスワード表示(※ゲームを再開する際に必要)
START:(使用しません)
Aボタン:コマンド決定
Bボタン:コマンドキャンセル、テキスト早送り
船内の各層を移動する場面では、上画像のような画面へと切り替わる。
十字キーを上方向に入力すると奥へ、下方向に入力すると手前へと移動。左右どちらかに扉が見える場合はそれぞれの方向へと入力することで入室が可能だ。
船内廊下は360度のドーナツ型に展開しているため、そのまま同じ方向に進むことで1周可能な仕組みとなっている。簡易マップのような機能は備わっていないので、現在位置については扉の並び方で判断しよう。
シーンダイジェスト
1号機のキャプテンであるハイラーも未知の生物に襲われた様子。
他のメンバー達の安否は―
未知の生物は人間のDNAの採取が目的?
銀河戦士らしく、叱咤激励で速雄達を奮起させようと努めるミラコフ。
弱点を探りながら敵の正体に少しずつ迫っていく速雄達だが、神出鬼没な未知の生物に対して次第に追いつめられていく。
この強力な存在に対して、果たして速雄達に成す術はあるのだろうか―?
オーソドックスな設計でストレスなくプレイできる、良質なSFアドベンチャーゲーム
80年代後期といえば映像作品においてSF(サイエンス・フィクション)、取り分け宇宙を題材にしたものはとても勢いがあった頃で、同ジャンルの作品は多数登場していた時代。
「ジーザス」におけるビジュアル面での充実はアドベンチャーゲームの枠に限定せず、それまで登場したファミリーコンピュータタイトルの中でも目を惹くクオリティで、作中のグラフィックのタッチから言っても往年のSFアニメーション作品を強く意識した作品であったことは間違いない。
一本のアドベンチャーゲームとして見た場合は進行上で行き詰まる事はほとんどなく、ストーリー展開のテンポも良好。レトロアドベンチャーゲームのお手本のような作りでとても遊びやすい。80年代という時代ならではのテイストがそうさせたのか、キャラクターのテキストがやや緩い印象もあるが、サスペンス性を含んだハードな展開も本作の魅力だ。
ただし本編進行上の難点がただ一点あり、ゲーム終盤のちょっとした謎解きの場面がこれにあたる。
(※以下でゲーム進行上のネタバレを含む記述部分のフォント色を変えてあります)
キーボード(作中では“レーザーロン”という用語で呼ばれている)を使って順番通りに音階を入力することで特定のメロディを奏でる―
いわゆる音合わせのシーンが登場するのだが、ここまでのプレイで特定の箇所を調べていない場合は耳にする機会がない曲がその回答となるため、場合によっては該当するメロディに関してピンとこないケースが考えられる。
解法自体はインターネット検索を通して発見できるので、どうしても分からない場合は観てしまうのも良い
本作はPCゲームとして、続編である「ジーザスⅡ」も登場している。
生憎とファミリーコンピュータでは1本目のみが移植されたため、同機上で続編をプレイできないのは残念なところだが、本作一本でも綺麗にまとまった一本のストーリーとして楽しむことはできる。
たった2Mビットと言う限られた容量でハイクオリティなドットグラフィックを堪能できるSFアドベンチャー「ジーザス 恐怖のバイオモンスター」。
オーソドックスなSFアドベンチャーゲームファンは是非一度触れてみよう。
まとめ
良い点:
・SFアニメーション作品を意識した美麗なビジュアル
・アドベンチャーゲームとして作りが丁寧で、プレイ中のストレスが少ない
・ファミリーコンピュータでは希少な、クラシックスタイルのSFアドベンチャーゲーム作品
惜しい点:
・続編を伺わせるラストだが、結局同機上では続編は販売されなかった(PC版では同作2が登場)
・主要人物の多くは比較的前半で退場してしまうこともあり、キャラ1人に対する掘り下げが若干少ない
・ゲーム終盤の仕掛けは、音感に乏しいプレイヤーにとってはノーヒントでの突破が困難