fault – milestone one ~迷い人は故国を想い帰路の旅へ— 分作ノベルゲーム第1作

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©2019 ALICE IN DISSONANCE / ©2019 Sekai Games

 

 

基本情報

 

タイトル fault – milestone one
対応機種 Windows/Steam/Nintendo Switch
販売/開発 Sekai Games(Switch版)/Alice In Dissonance
発売日 2013年8月9日(Steam)/2019年10月3日(Switch版)
対応言語 日本語,英語,ドイツ語,スペイン語-スペイン,韓国語,ロシア語,ポルトガル語-ブラジル,中国語 (簡体字),イタリア語,スペイン語-ラテンアメリカ
備考 CEROレーティング表記:C(暴力、犯罪)

続編「fault -milestone two上」以後のシリーズではパブリッシャーがphoenixxに変更となった。

 

作品概要

「fault – milestone one」(「フォールト マイルストーン ワン」)はAlice In Dissonance(AiD)が開発を手掛ける分作ノベルゲームシリーズ。コンシューマー版となるNintendo Switch版ではSekai Gamesが販売を担当する。

本作は異世界サンアリズタ大陸を舞台とした連作スタイルのビジュアルノベル。自然界の恵み「マナ」という概念を享受し、独自の文化発展を経て形成された世界に生きる人物達の壮大な群像劇だ。

 

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2013年にWindowsで第1作登場以降、Steamをメインプラットフォームに全世界を対象に配信。シリーズ合計50万本以上の売り上げを突破した人気シリーズで、本編は現在2作目である「fault – milestone two上」(次作以降、全プラットフォーム版のパブリッシャーをphoenixxが務める)まで販売されており、その続編にあたる「(同)two下」が鋭意制作中。外伝にあたるタイトル「fault -StP- LIGHTKRAVTE」もリリースされている。

 

企画・シナリオ担当のMunisix、イラスト担当の小夏はれ両氏によって紡がれる緻密な設定をもった世界観と魅力的なキャラクターが本作のウリで、北米のクリエイター支援プラットフォーム「patreon」を利用した積極的な創作活動を行っていることから海外タイトルのローカライズ作品と捉えられることもあるようだが、小夏氏のツイートによれば「原作シナリオは日本語によるものである」とのこと。

 

リンク:ALICE IN DISSONANCE(Twitter)

リンク:Sekai Games(Twitter)

 

プロローグ

 

(※本編プロローグより抜粋、要約)

 

大地の恵みである『マナ』の様々な活用によって生まれたマナ文化が、

サンアリズタ大陸全土に浸透して幾星霜。

書物よりも情報伝達速度が圧倒的に長けた『通信クラフト』の登場により、

人々はそれまで以上により多くの知識を得る事となる。

 

その影響から教会離れが進むと同時に世俗主義が主流となり、

啓蒙時代の黎明期を迎えようとしていた現代。

サンアリズタ大陸で最も名の知れた平和な国ルゼンハイドでは、

歴代継承者の手によって記憶継承のクラフト『パスダウン』を9世代に渡って守り続けてきた。

 

しかし、60年以上続いた平穏な日々はとある来訪者の登場を切っ掛けに、

唐突な終わりを告げようとしている―。

 

 

 

 

 

 

登場人物

 

下記で主要な登場人物を紹介。

 

セルフィーネ=ルゼンハイド

マナ文化の発展による文明で栄えたサンアリズタ大陸の大国ルゼンハイドの現王女にしてパスダウン9代目継承者。

平和に暮らしていたが、あるトラブルを切っ掛けに国の反対側に位置する”カディア市”へと流れ着く。

リトナ=ラインヴァスタ

王国を守護する”ガーディアン”の責を担う名家ラインヴァスタ家最後の末裔。マナを戦う技へと変容させる技巧者「バトルクラフター」でもある。

あるトラブルにより、セルフィーネと共にカディア市へと流れ着く。

ルーン

セルフィーネ一行が辿り着いたカディア市内で出会う少女。

文明の異なる遠い異邦の地からの旅人、というセルフィーナ達に深い興味をもち、案内人として色々と世話を焼いてくれるのだが…?

ルド=ゼヴィッツ

カディア市の大手企業「ゼヴィッツエンタープライズ」の若きCEO。

ルーンと何か関わりがある人物のようだが…

ハルツワン=グロウリーズ

酒場「エイヴィルス・タバーン」の常連客にしてカディア市のアパレルブランド「グロウリーズアパレル」の2代目店主。

酔いどれではあるが、その仕立ての腕は随一。

アルバス=フォルスター

カディア市の大企業ゼヴィッツカンパニーのCTO(最高技術責任者)。

ルドの父親でもある先代CEOシド・ゼヴィッツとは古くからの親友で、ゼヴィッツエンタープライズは彼ら2人が中心となって起業した会社でもあった。

 

操作方法

 

操作方法(Nintendo Switch版)

JOY-CON(左)
上下左右ボタン 上:1行戻る 下:オートモード 左:ロード 右:セーブ
Lスティック
Lボタン
ZLボタン (長押しで)早送り
-ボタン メニュー

 

JOY-CON(右)
Rスティック
Aボタン 読み進める/決定
Bボタン テキスト非表示/キャンセル
Yボタン 辞書
Xボタン メニュー(-ボタンと同じ)
Rボタン オートモード(下ボタンと同じ)
ZRボタン (長押しで)巻き戻し
+ボタン 早送り

Nintendo Switch版での操作方式は、一般的なビジュアルノベル作品に比べてやや特徴的な箇所が見られる。とりわけ十字キーについては左キー入力でロード、右キー入力でセーブ画面へとショートカットが可能と、各方向毎に異なる機能が備わっているのは独特な点だ。

 

セーブ/ロードについては1ページにつき8箇所の記録スペースが4ページ分用意されており、全部で32のセーブデータを作成可能。と言っても内容的にはひたすら読み進めるだけのゲームなので、普通に進める分には全編ボリュームに比してやや過剰数とも取れる。印象的なシーンやチャプター毎に細かく区切ってセーブしたい方にとっては重宝することだろう。

 

作中用語/世界観

 

「fault – milestone one」では本作固有の設定が多数登場し、ゲーム内には作中用語専用の辞書機能がシステムの一環として搭載されている。ただし、その中で触れられているのはほんの一部で、独特な世界観の補足という一助を担う機能に限定されている。

以下ではその補足として、本編に登場するキーワードの中で特に大きく関わるものの一部を辞書に記載されているものも含めて紹介していく。

 

(※一部ネタバレ要素を含む場合があるため、読み進める際はご注意下さい)

 

サンアリズタ大陸

マナの恩恵を受ける領域”インナーポール”の内、特にその濃度の高いエリア”サードポール”に位置する大陸。

 

テラクラフトや通信クラフトの発達による独自の文化を持ち農耕、牧畜が盛んで交易も少ないが、同時に他国からの侵略も少なく比較的平和な大陸でもある。

大陸内の代表的な国として、マナクラフト文明の中核にしてアライアンス創設国であるルゼンハイド、その友好国ヴァストアルカなどが挙げられる。

 

マナ

命の源とされるエネルギーの一種。

マナにはファイア、アクア、テラ、エアロの4大元素から構成されているカラードマナと、生物の体内から精製される無属性のピュリファイドマナがある。

 

サンアリズタ大陸においてカラードマナは、自然物や大気中に含まれたごく普通のものとして存在し、惑星中に存在する国や地域の内、7~8割がマナの恩恵を受けつつそれを活用する形で発展を遂げてきた。

一方で、十分なカラードマナが行き届かないアウターポールと呼ばれる地域では、マナの恩恵が得られない環境による暮らしを余儀なくされる。

 

カラードマナは体内に取り込むと毒となる性質を持っており、過度な吸収を行うと酸欠に近い状態に見舞われた後、ショック症状(マナショック)を引き起こし、最悪の場合死に至る。

この症状は生来マナの豊かな環境で暮らして来た者であっても、アウターポールのような極めて少ない環境に長時間身を置くことで同症状を引き起こす危険性がある。

 

マナクラフト(クラフト)

カラードマナとピュリファイドマナを使用して様々な現象を起こす技術はマナクラフトと呼ばれ、現代のサンアリズタでは戦闘、医療、農業、情報技術などあらゆる分野で社会を変えつつある。

戦闘において活用される”バトルクラフト”は一定の年齢時に『エグザルテーション』と呼ばれる特別な儀式と、専門的な訓練を受けたものだけが扱う事を許される。

リトナはバトルクラフターとして代々、ルゼンハイド王族を直近で守護する家系・ラインヴァスタ家の最後の末裔である。

 

通信クラフト

テラクラフトの応用から開発された通信手段として用いられるクラフト。

 

マナラインの一種である”通信ライン”を人工的に引いた後、互いが持つマナの質(シグニチャー)を認識した者同士で連絡を取り合う事が可能となる。

現実世界に置き換えるならばチャット、もしくはSNSを使った通話に近い。

 

サンアリズタ大陸が栄華を極めた理由の1つには、王族がこの通信クラフトの活用と発展に大きく貢献したことにある。

 

パスダウン

個人の記憶、経験、知識といった情報を利用者へと直接伝え移す事ができる”記憶転移”のクラフト。

 

サンアリズタの王族のみが使用可能な秘術として大陸内に長く伝えられている。

パスダウンによって受け継がれる記録は一代ごとに積み重なっていくため、代を追えば追うほどに始祖から前代までの記憶を全て引き継ぐ形となり、継承者個人の人格に大きな負担となる危惧も併せ持つという。

 

パスダウンによる継承が長きに渡って守られ続けてきた国は、強国の証として認められる。

ルゼンハイド王家では前代の記憶が次代の者へと350年もの長きに渡り代々継承され続けており、セルフィーネはこの第9代継承者にあたる。

 

風言語

外交を重視する政治体制を築く、という目的でルゼンハイド6世によって開発されたコミュニケーションクラフトの一種。

 

他人の発する言葉を意志の波長へと変換、同調のプロセスを経ることで他国の言語であっても理解することができるようになる。

使用者のコミュニケーション能力次第で精度が変わってくる。

 

ビルセリオ

「人の出会いは幸に始まり、幸に終わる」といったサンアリズタの言い伝えに由来する、大陸内で挨拶代わりとして使われる風習の1つ。

 

薬指、中指、人差し指を前に突き出し、親指と小指で握手するといった形がフォーマルなやり方で、「幸を共に」「幸運を」といったニュアンスを持つ。

 

世代や地域によって「ビ」もしくは「ヴィ」といったアクセントの違いにより、「ヴィルセリオ」と発音する場合もある。

朝の挨拶は「ヴァイコーレ」、夜間の挨拶は「ヴォストロ」と時間帯で言葉が派生したり、よりカジュアルな「ヴィッス」といった砕けた挨拶もある。

 

カディア市

セカンドポール心臓部から南南西に位置するサードセクター・コルドーン国の都市。

 

島全体が丸ごとマナの恩恵を得られない地域”アウターポール(神々に見捨てられた土地)”に辺り、他地域が推進してきたクラフト文明に代わる形として『科学』技術の開拓による独自の発展を遂げた。

 

カディア市ではクラフトという概念は無いものに等しいとして扱われるが、有限であるマナ自体の貴重さは皆認識しており、補助材料として扱われるセディメントの価値が低品質なものでも異常な価格を見せているなど、マナを取り巻く事情は他所に比べて大きく異なる。

 

ゼヴィッツカンパニー

カディア市の名家ゼヴィッツ家の先代当主シド・ゼヴィッツと友人アルバス・フォルスターの二人が起業した巨大企業「ゼヴィッツエンタープライズ」を母体とする会社。

 

ゼヴィッツ家が保有するマナ鉱山から採掘可能なピュリファイドマナをエネルギーに還元する動力をカディア市民に提供している。

(科学によるエネルギー供給を行うという意味では、現実世界における電力会社のようなポジション)

 

地質上カラーズマナの恩恵が得られない土地、”アウターポール”リージョンに位置するカディア市においてエネルギー提供の要となる巨大な会社で、労働力として多くのマナマインワーカー(マナ鉱山労働者)や優秀な科学者を抱えている。

 

ゼヴィッツ家が関連する一連の事業については作中、ゼヴィッツカンパニーに特に大きくスポットがあたっているが、その一方でシドは医療方面にも力を注いでおり、後に妻エリネを統率者とする医療施設ゼヴィッツ・メディカが創設された。

これはエリネが生来病弱であったことにも起因している。

 

教会

科学による発展を遂げたアウターポールにおいても教会は存在する。

 

サンアリズタにおける教会の信仰は「マナを神と同一視する」傾向にあり、科学という分野を受け入れることを由としない。

そのため、ゼヴィッツカンパニーやハイビス社の方針に対してはどちらも同じものとして扱い、静観の態度を崩さずにいる。

 

当時マナショック感染症が蔓延する事態となった際にゼヴィッツカンパニーは総合病院の建設を推進していたが、一般大衆においては医学ではなく神の教えにこそ救いを求める者は多かったという。

 

 

サンアリズタ全土に広く浸透しているマナ文明とアウターポールというハンデを得ながらも切り拓いた科学文明。どちらも発展の経緯としては互いに正反対な形を取ってはいるが、各々の環境下で出来ることを精一杯努力と工夫で補ってきた証左でもある。

慣れ親しんだ地であるルゼンハイドの常識と文化が通用しない地域へと、突如放り込まれたセルフィーネとリトナ。二人にとっての帰路の旅は、新たな発見の連続による衝撃と価値観を知る機会に満ちたものとなるはずだ。

 

プレイ後の感想

「fault – milestone one」は分作構成による大作ビジュアルノベルの序章にあたり、王国を追われ、異邦の地へとたどり着いたセルフィーネとリトナの長い長い旅の始まりにしてその旅路の一篇を綴った作品だ。

自然界の大気中や大地に溢れるマナを活用することで発展してきた国、マナに恵まれずその代替として技術による発展を遂げた国。異なる文明と価値観を持つ2つの国を巡って、人と人との出会いが繋ぐドラマが本作最大の魅力である。

テキストについては随所に少々独特な味わいも感じられるが、好奇心旺盛且つ天真爛漫な王女と王女守護を最優先する腕利きの側近という、コンビとして王道味溢れるセルフィーネとリトナのやり取りは、時に賑やかに、時に目の前の問題に真摯に向き合うスタイルで見ていて心地良い。

 

シリーズ第1作目にあたる今作では主に登場人物の1人であるルーンにスポットが当たった物語が展開。「罪過」を意味するシリーズタイトル「fault」をテーマにした重厚な人間ドラマは目が離せない。

全編を読み終えるまでの所要時間はゆっくり読み進めて6~8時間程度。背景CG+キャラの立ち絵+テキスト表示といった一般的なビジュアルノベルに準じたインターフェースで展開していくが、今作では各登場キャラにボイスは当てられていないので、自分のペースで読み進めることができるのは利点だ。

なお本編内容に触れない上でのネタバレとなるが本作は、極めて唐突な場面で終わりを迎えてエンドロールへと入る。続けて次作へ移らないとモヤモヤが残ることは必至なので、本作に手を出す場合は販売済みのリリース分はまとめて購入する事を強くオススメする。(Switch版では今作と次作でパブリッシャーが異なる点には要注意)

本編読了後、今作のキャラクターや世界観にしっかりとした魅力を感じた方ならばこの先の展開も楽しむ事ができるだろう。

 

故国への帰郷を目指すセルフィーネとリトナは、果たしてその旅路でどんな人々や事件と出会うのか? 気になった方はまずは今作から「fault」の世界へと触れて、是非シリーズを追ってみよう。

 

評価

 

個人的スコア(10点満点中) 7.5

 

良い点

  • 緻密な設定で作られた神秘的な世界観と情感豊かなキャラクターが織りなす群像劇が濃密な読後感をもたらす
  • 印象的なムービーシーン、ノベルパートにおける効果的なカメラワークなど、ビジュアルノベルゲームでありながら随所でこだわりの演出が見られる
  • BGMも良質なものが多数揃っており、作中のドラマを彩っている

惜しい点

  • 魅力的なキャラクターが登場する一方、全編を通してボイス非対応&リップシンク無し、といった立ち絵の変化がほとんど無い点は寂しい人には寂しいかも
  • Encyclopedia(辞書)機能による作中用語の補足は必要最小限なボリュームで収まっており、内容の充実感については乏しく感じられる
  • 1行読み戻すという機能は搭載されている反面、数行一度に読み返すことができるようなバックログ機能が搭載されていない

 

 

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